(1)評価
・ビジネス環境ー世界7位(世界銀行, 2019年)
・1人あたりGNIー4608$(世界銀行,2023年4月)
・法律の公平性ー世界34位(World Justice Report Rule of Law Index 2016)
・腐敗の少なさー33位/199カ国(Trace Bribery Risk Matrix, 2014)
・透明性の高さー41位/180カ国(transparency international, 2022年)
(2)概観
黒海観光、柑橘類、茶、ブドウ栽培のほか、ワイン、マンガンと銅の採掘、金属・機械・化学・繊維が中心です。ソ連からの独立後、貿易と価格の自由化、自国通貨ラリの設置、小さな政府の方針によって市場改革を進めました。さらに2003年の平和的なバラ革命以来、民間セクターの開発と投資の流入を通して、またアメリカの支援も受けて、経済的に大きく成長しています。
2022年からは、ロシアやウクライナ、ベラルーシなどから若手IT専門家などの流入が急増し、資本の流入によるGDPの成長が顕著です。観光ビザで1年間の居住が可能であり、その後1日以上国外に出ればさらに1年滞在できます。特に首都トビリシではワンストップの行政サービスが施行されており、写真撮影から書類申請、受け取りまで同じ場所で行うことが可能です。観光ビザも不要で、観光客でも銀行口座の開設などが簡便なため、ロシアやウクライナに拠点を置いていた各国企業がビジネスの移転先として活用しています。
(2)投資
2013年〜2022年には海外からの直接投資額が138億ドル近くにのぼり、経済成長の原動力となっています。
安定した経済発展や自由市場を指向する経済政策、6種類のみと限定的な租税、ライセンス・許認可の少なさ、簡素な管理手順、諸外国との貿易体制、統合されたインフラ、地理的優位性、教育を受けた労働力が評価されています。
(4)貿易
2014年の貿易協定締結以来、ジョージアはEUの包括的自由貿易圏の一部となっています。ジョージアにとってEUは貿易額の4分の1を占める最大の貿易相手です。一方ロシアが主導するCISとの貿易はそれ以降大幅に減少していますが、いまだにロシアが貿易先として3位に位置しています。
主な輸出品:銅鉱、合金鉄、自動車、ワイン、エチルアルコール及び蒸留酒
→移住者・観光客の流入を受け、建設やサービス分野の増加が期待されています。
主な輸入品:自動車、石油、銅鉱、医薬品、石油ガス
(5)産業構造
①鉱工業
ジョージアには石炭や天然ガス、泥炭、さらに大規模なマンガン鉱床が工業分野を支えています。
②エネルギー
水力発現に理想的な急流があり、ジョージアのエネルギー省の推定によると、ジョージア全土にわたって2万6000ほどの河川があり、うち300の河川ではエネルギー生産が見込めます。国内の電力利用の8割を水力発電で賄っているため、川が凍結する冬は電力を輸入し、春と夏に電力を輸出しています。
③農業
茶、柑橘、ナッツ、チーズ、タバコ、テーブルビート、バラなどの花の精油が生産されていますが、中でも優れたワインの産地として知られます。
ブドウ栽培とジョージアワインの製造は有名で、450を超すブドウが栽培されています。2021年には約1億700万本のワインを輸出して過去最高となり、日本にも20万本近く輸出されました。特にルカツティリ(Rkatsiteli)やサペラヴィ(Saperavi)といったブドウが名産品として知られます。
④観光
人口430万人に対して、2019年には500万人の観光客が訪れたジョージア。シルクロードの要衝として6000年以上の歴史を持ち、温暖な気候と肥沃な大地に恵まれる観光大国です。
日本人が好きな温泉やワイン、山々のトレッキングや乗馬、スキー、ラフティングも楽しめます。伝統的な民族舞踊や独自の音楽を楽しみ、金銀細工や刺繍、木彫、石彫をお土産に買ってみませんか?
⑤物流
交通が比較的発達していること、さらにヨーロッパとアジアの中間に位置する地理的・政治的重要性から、欧州・コーカサス・アジア輸送回廊(TRACECA)計画のメンバーとなっています。
ただし、現在はジョージアがロシア制裁に参加していないため、ロシアの輸出入がジョージアを経由しており、国境での渋滞が発生しています。これを受けてアゼルバイジャンとの国境では365日24時間の稼働が実施されている他、ロシア国境にある南北輸送道INSTCを復活させています。
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参考文献
National Statistics Office of Georgia. “100 Years”
https://www.geostat.ge/en, (2023-8-16)
TRACE. “ Bribery Risk Matrix”.(2014)
https://www.traceinternational.org/trace-matrix#matrix-results, (2023-8-16)
World Justice Report. “WJP RUle of Law Index 2016 Report”. (2016)
https://worldjusticeproject.org/sites/default/files/documents/RoLI_Final-Digital_0.pdf, (2023-8-16)
World Bank. “GNI per capita, Atlas method (Current US$)”. (2023-4)
https://data.worldbank.org/indicator/NY.GNP.PCAP.CD, (2023-8-16)
transparency international. “Corruption Perceptions Index”. (2022)
https://www.transparency.org/en/cpi/2022,(2023-8-16)
遊佐弘美. “活況を呈するジョージア経済ーロシアのウクライナ軍事侵攻の影響ー”. 一般財団法人海外投融資情報財団(JOI)ビジネス情報誌「海外投融資」2023年1月号
https://www.joi.or.jp/wp-content/uploads/2023/01/Mag_202301_14_seriesMACROgeo.pdf(2023-8-16)
外務省. “ジョージア(Georgia)基礎データ”. 2023-6-12.
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/georgia/data.html,(参照2024-8-8)
世界銀行. “ジョージアが迅速に回復ーヨーロッパ・中央アジア地域の新興国で力強い回復が景気を刺激”. 2021-10-6.
https://www.worldbank.org/ja/news/press-release/2021/10/06/fast-recovery-underway-in-georgia-as-strong-rebound-boosts-economies-in-emerging-europe-and-central-asia, (2023-8-16)
谷口麻由子.”シリーズ シルクロード沿線諸国の現状と日本企業のビジネスチャンス 第8回 ジョージアの政治経済の変化とビジネスチャンス”.野村総研
https://www.nri.com/-/media/Corporate/jp/Files/PDF/knowledge/publication/chitekishisan/2019/06/cs20190606.pdf?la=ja-JP&hash=011BBAFA340DCE6D3E89DF199C8F7F4FC284BF38,(2023-8-10)
National Wine Agency of Georgia. “統計資料(2022年)”
https://www.georgianwine.jp/data-sheets-2022/, (2023-8-16)
IEA (2023), Georgia energy profile, IEA, Paris https://www.iea.org/reports/georgia-energy-profile, License: CC BY 4.0